『ありがとう!わさびちゃん』

カラスに襲われた子猫は、87日間、一生懸命生きぬきました。
父さんと母さんは、凄まじい悲鳴を聞いて、驚いて外に飛び出しました。
今まで聞いたこともない、耳をつんざくような悲鳴。
そこで母さんが見たのは、大きく翼を広げた真っ黒なカラス。
その鋭い嘴には、子猫が!
父さんの大声におどろいたか、カラスは子猫を放して飛んでいきました。
が、・・・
子猫は重症でした。
血に染まって、ぐったりと横たわる子猫。
その子は、近所の野良猫母さんが産んだ5匹の中の1匹でした。
まだ生後2-3週間。
父さんと母さんは、病院へと急ぎます。
なぜか、カラスは、子猫の口の中を集中的に攻撃していました。
そのため、体の他の部分は無事だったのですが・・・
怪我は、上顎に穴が開くほどの粉砕骨折。
下顎も折れて左右に分離。
さらに、舌も裂けていました。
おそろしい傷です。
お口を怪我してしまったので、自力で食べることができません。
人間が、カテーテルで給餌する必要がありました。
小さな子猫の細い喉にカテーテルを差し込むのは、そうでなくても難しいのに、わさびちゃんはそのお口を大怪我しているのです。
しかも、痛いのでしょう、血の泡を吹いて暴れます。
お世話をする父さん母さんの苦労は並大抵ではありません。
お婆ちゃんが、得意の編み物で、特製「おくるみ」を作ってくれました。
おくるみに固定されて、カテーテルを挿入しやすくなりました。
自力でウンチができるようになり、じゃれたり、、爪とぎしたりできるようになったのに。
突然、発作が・・・
そして、わさびちゃんはお星に・・・
わさびちゃんの闘病は、ツイッターで逐一、報告されました。
たちまちフォロワーが増え、大勢の人々がわさびちゃんを応援しました。
大勢の人々が、勇気をもらいました。
わさびちゃんのために祈りました・・・。
わさびちゃん、本当に可愛らしい仔猫なんです。
くりんと大きなお目目、愛らしい口元。
配色も絶妙。
神様がお造りになった中でも、とりわけ可愛い子猫なんです。
犬のぽんすちゃんとも仲良しでした。
たった87日の短い生涯。
でも、わさびちゃんの姿には、不思議なくらい「悲壮感」はありません。
ふつうに健康な子猫のように、無邪気で愛くるしいのです。
わさびちゃん、よくがんばったね。
そして、ありがとう!
感動の、フォトエッセイです。
*****
今、我が家には、逆に「カラスに助けられた子猫」がいます。
車に轢かれて、息も絶え絶えに横たわっていた子猫。
しかも真夏のアスファルト路上です。無傷だったとしても、たちまち熱中症にやられてしまいかねない酷暑の日です。
田舎道で、歩いている人もいません。
子猫の命はまさに、風前の灯火でした。
そのとき、カラスが子猫の上で、ひらり、ひらりと飛びました。
それを偶然、遠くから見た私は
「カラスが道路の上でああいう舞い方をするときって、動物が轢かれていることが多いのよね・・・」
と、なぜかわざわざ、見に行ったのです。
そして間一髪、子猫を救うことができたのでした。
カラスがいなければ、私が気づくことは永久になかったでしょう。
子猫は、右前脚と、尻尾の先端を失い、右脇腹に5針の裂傷、さらに、左前脚2か所、左脇腹2か所、尾の付け根にも大きな傷がありました。
でも、命は助かりました!
トラ模様の子猫、トラのように強く育てと、「虎太郎(こたろう)」と名付けられ、今は家族の一員です。
皆様に、お願いがあります。
もし、重症の猫を見つけてしまった場合、・・・
どうか、すぐに動物病院へ連れて行ってあげてください!
躊躇っているヒマはありません。
どれほど絶望的に見えても、決して「もうだめだろう」なんてあきらめないでください。
うちの虎太郎だって、私が発見したときは、まだ呼吸しているのが不思議なくらいだったんです。
でも生き延びました。
わさびちゃんは、残念ながら、お星様になってしまいましたが、日本中の人々を勇気づけ、亡くなった今も、勇気づけ続けています。
どうか、迷わずに、助けてあげてください。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ありがとう!わさびちゃん』
- 著:わさびちゃん
- 出版社:小学館
- 発行:2013年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:9784093434386
- 118ページ
- カラー
- 登場ニャン物:わさびちゃん
- 登場動物:ぽんずちゃん(ゴールデンレトリーバー)、ぼーちゃん(セキセイインコ)
目次(抜粋)
WASABI-CHAN! PHOTO ALBUM Vol.1
わさびちゃんがうちにやってきた
がんばったね。わさびちゃん
わさびちゃんの主治医の先生
子猫を保護したら
さわびちゃんとぽんずちゃん
わさびちゃんの仲間たち
WASABI-CHAN! PHOTO ALBUM Vol.2
あとがき