リリアン・J・ブラウン『猫はチーズをねだる』

不思議な女と、爆弾事件と、食の祭典と。
市内のうわさスズメたちは、ふたつの話題で持ちきりだった。
一つ目は、ある外国人らしい女性のこと。
ピカックス市は人口わずか3000人の、どこからも400マイル北にある、田舎町である。
よそ者がくれば、たちまち知られてしまう。
ましてそのよそ者が、中東あたりの外国人女性で、髪で顔を隠した黒づくめの服装、誰とも口を利かないまま、2週間もオンボロホテルに滞在していた。
周囲をはばかるように行動すればするほど、かえって目立って、人びとの注目を浴びてしまう。
その女性が宿泊していたホテルの部屋が、大爆発を起こした。
従業員がひとり死んだが、くだんの女性は別の場所にいて助かった。
彼女は実は、クィラランと一緒にいたのである。
まったくの偶然だったが。
爆発事件の直後、女性は飛行機で去ってしまう。
誰にもなにも告げずに。
クィラランは、今でこそ優雅なご隠居だが、昔は敏腕事件記者だった。
いやでも好奇心がうずく。
さらに、愛猫ココも、クィラランをせきたてる。
ココも明らかに、なにか重大な犯罪を感じ取ったらしい。
もうひとつの、話題。
それは、市をあげての企画〈食の大探求〉のこと。
新しいレストランが数件、一斉オープンする。
ローリ・バンバも「スプーナリー」という店を開店予定だった。
彼女はクィラランのパートタイム秘書で猫の師匠でもある。
クィラランも、この騒ぎには否応なしに巻き込まれていた。
新聞に記事を書くことを求められていたし、レストランでの食事を含むオークションの一員に選ばれていたし、パスティ・コンテストの審査員でもあった。
さらに、チーズ・フェアは、ほかならぬクィラランの住居、元リンゴ貯蔵納屋で開催される予定だった。
そして、ココはチーズに異常なほどの興味をしめし始める。
なかでも、特定の3つのチーズ品種。
ブリー、グリュエール、フェタの3種。
これらどれかの名を聞くと、シャムネコ特有の甲高い声で、大きく鳴くのだった。
そして、また、死体・・・
*****
いかにもアメリカらしい企画が出て来ます。
その名も「名士オークション」。
ピカックス市在住の名士たち、独身男性と独身女性五人ずつの計十人と、半日デートの権利をオークションで競うというものです。
デート内容は、まず特定のイベント、たとえば、ダンスや(プロによる)写真撮影、あるいは乗馬やオートバイツーリング、ロックコンサート、等。
そのあとで一緒にを食事する、というパックです。
そして、競り落とされたお金は慈善事業に使われます。
つまり、全部、慈善事業のためのお祭りなんですが、それにしてもね?
日常的に顔を合わせることもあるような相手と半日デートするために、キャーキャー騒いで金額を釣り上げていくという発案が、とてもアメリカらしいと思いませんか?
しかもその後、人々の好奇の目と口にさらされながら、堂々とデートしているんです。
日本では、そんなこと、照れくさくてできないでしょうね。
日本でそのようなオークションをするとしたら、そのお相手の〈名士〉は、テレビでしか会えないような俳優やミュージシャン、プロスポーツ選手等を、外部から呼んでくるんじゃないでしょうか。
そして、翻訳者の羽田氏もあとがきで書いていらっしゃいますが、・・・
この本を読むとチーズが食べたくなります!(笑)
パスティも食べたくなりますが、日本ではパスティはそれほど有名な食べ物ではありませんし、自分で焼く以外、食べるのは難しい。
けど、チーズなら、当地のような田舎スーパーでも、何種類も並んでいます。
ネットショップなら、ほぼどんな種類だって購入可能ですしね。
私、ヤギのチーズとか、けっこう好きなんですよ(臭いけど)。
なんか無性に食べたくなってきたぞ・・・!!
(でも買わない、ってか、買えない(涙)。だって、高齢猫のトロをはじめ、猫たちの療法食や医療費がバカにならない金額・・・節約しなきゃ~~汗)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫はチーズをねだる』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ
- 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
- 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:1999年
- NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
- ISBN:9784150772178
- 339ページ
- 原書:”The Cat who said Cheese” c1996
- 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム
- 登場動物: