リリアン・J・ブラウン『猫は留守番をする』

ブラウン『猫は留守番をする』

 

女医メリンダが狙った相手。

老グッドウィンター医師が亡くなった。
娘のメリンダが、跡を継ぐために、ピカックス市に戻って来た。
クィラランとメリンダは、昔の一時期、あわや良い関係になりそうな間柄だった・・・メリンダがあまりに積極的で、クィラランが流されそうになったのだ。

が、今のクィラランには、ポリーという公認の彼女がいる。
メリンダは今のクィラランの好みとはかけ離れているし、ポリーは嫉妬深い。
クィラランにとって、メリンダの帰郷は、厄介ごとのひとつとなった。

もうひとつ、クィラランには心配事があった。
以前、ポリーを付け回した車がまた現れたこと。
ポリーとクィラランの関係は知れ渡っている。
ポリーを誘拐して大富豪クィラランから身代金をゆすろうとしているのだ、と、彼は恐れている。

だからポリーが、「スコットランドの古城と諸島を巡る観光旅行」に出かけることには賛成だった。
ポリーの身の安全のためには、しばらく土地を離れるのが良い。
ツアーコンダクターは、ポリーの友人、アーマ。完璧主義者のボランティア活動家だ。
クィラランも参加することにした。
総勢16名。ピカックス市の名士ばかり。

まさか、そのツアーの途中で、アーマが亡くなるなんて。
もとから心臓が悪かったのだと医者のメリンダは証言した、でもまだ40代の若さだった。
さらに、グレース・アトリーの宝石コレクションがつまったスーツケースも盗まれる。
一行は這う這うの体で、アメリカに戻ってくる。

シャムネコのココとヤムヤムは、留守の間、ミランダが世話をしていた。
帰国したクィラランに、ミランダは何気なく、ココの不思議な行動を報告する。
クィラランの口髭が震える。
それは、まさにアーマが死亡した時間。
ココは、アーマの異変を、海の向こうから察したのだ。
しかも、ほかならぬココが予感したのであれば、それはおそらく、殺人。

そして・・・

クィラランの身近な女性ふたりが、狙われる・・・!!

*****

スコットランドの話が多く出て来ます。
クィラランの母はマッキントッシュ出身だし、父の一族もスコットランド北部の島の出身らしく、だからクィララン自身、スコットランドとは少なからぬ縁を持った男なのです。
キルトや、バグパイプや、ショートブレッドや、ハギスなんて単語も頻発。
ショートブレッドは日本でも普通に入手できますが、ハギスはまず見かけない、その「ハギス」が猛烈に食べたくなってきました。
実はハギスって、食べた記憶はないんです、多分あれがそうだったんだろうというものはあるのですが、確信は持てません。
マルグレイ『ねこ捜査官ゴルゴンゾーラとハギス缶の謎』を読んだときも、すごく食べたくなりました。
おいしそうだから、というよりは、むしろ好奇心ですね。
私、今でこそ、ほぼベジタリアンな生活ですけれど(外食事のかつお出汁等まで排除するのは難しいので〔ほぼ〕がつきます)、もとは肉好き、羊肉は大好き。
話題の種に、一回くらい食べてみようかと検索したら、缶詰ひとつが1000円前後もして、しかもイギリスから直送しなきゃならない?
あらま。
残念ですが、止めておきます。
1000円あれば、うちの猫たちに猫缶をいくつも買えますもん。

スコットランドまで旅行したわりには、スコットランドの風景はあまり出て来ません。
田舎宿がボロいとか、食事がワンパターンでまずいとか、天気が陰気だとか、そんな、ありきたりの描写だけで。
これぞスコットランド!って描写が無かったのが、ちょっと残念。

そして、クィラランとポリーは、旅行を早めに切り上げてバタバタと帰ってしまいます。
その後はまたいつもの、ピカックス市での平凡な生活が続きます。

この「シャム猫ココシリーズ」って、ミステリーとしては、相当異質ですよね。
だって、全体的に、かなり地味なんですから。
ミステリー小説らしい凶悪な犯罪者との息詰まる追いかけっことか、邪悪な犯罪者どうしの暴言にみちた会話とか、派手な撃ち合いとか、影の大犯罪組織の陰謀に満ちた駆け引きなど、おどろおどろしい場面や、派手なアクションはありません。
ただ一般市民のクィラランが、猫たちの世話をしながら、田舎町の狭い社交界をうろうろしているだけ、といっても過言ではないような、ごく日常的な筆運び。屋敷を放火されたり、交通事故にあったり、犯人と言い合うなどのハプニングはありますが、単発的です。
なのに、ふたを開けてみると、連続殺人が行われている。
そして、猫がみごと、犯人を暴いている。
なかなか真似のできないストーリー展開です。

『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ まとめはこちら

ブラウン『猫は留守番をする』

ブラウン『猫は留守番をする』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫は留守番をする』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ

  • 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
  • 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
  • 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
  • 発行:1996年
  • NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
  • ISBN:4150772134 ; 9784150772130
  • 350ページ
  • 原書:”The Cat who wasn’t There” c1992
  • 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム
  • 登場動物:

 

 

著者について

リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun Bettinger

1913年6月20日 – 2011年6月4日。アメリカの推理作家。
10代の頃から約30年、新聞社に勤務。
1962年、飼い猫のシャム猫がマンションの10階から突き落とされて殺された怒りと悲しみを忘れるために、記者業の傍ら執筆した短編「マダム・フロイの罪」(原題:The Sin of Madame Phloi)が『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』6月号に掲載され作家としてデビュー。エラリー・クイーンに「もっと猫の話を書くよう」勧められたことから、ココ・シリーズが生まれたという。
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ブラウン『猫は留守番をする』

7

猫度

7.0/10

面白さ

6.5/10

猫活躍度

7.5/10

猫好きさんへお勧め度

7.0/10

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